秋葉山 秋葉寺(三尺坊)

所在地 静岡県浜松市天竜区春野町
祭 神 三尺坊(秋葉三尺坊大権現)、聖観世音菩薩
ご利益 火伏(火防)

実際に行ってみなければ真相はわからないものです。結論から先にいいますと、ここが(山頂の「秋葉神社本宮」に比べ)秋葉信仰の一番古い霊場としての古色を残しており、三尺坊が出現したといわれる地であり、その信仰を守り続けているといってもよいかも知れません。

といいますのも、困ったことに秋葉(あきは)を名乗り、秋葉三尺坊大権現(以下三尺坊)や火伏の神(火防の神)にまつわる寺社が近辺に四箇所もあるのです。もちろん別ページで全てご紹介しますが、それは、ここ「秋葉寺(しゅうようじ)」と、やはり秋葉山の山頂付近にある秋葉(あきは)神社本宮と山麓の秋葉神社下宮、もっと海側に下った袋井市の可睡齋(かすいさい)です。本宮・下宮の「秋葉神社」では同じ火伏の神である火之火具土神(ほのかぐつちのかみ)を祀り、「可睡齋」では「秋葉寺」から移された三尺坊を祀っています。なんだか火伏の神の本家vs元祖争いの様相を呈していたのです。これも明治元年に出された神仏分離令や明治5年の修験宗廃止令廃仏毀釈運動のとばっちりを受けた結果です。しかし、江戸時代までは神仏混淆(神仏習合)の考えがあたりまえでしたから、「秋葉寺」も「秋葉神社」も一緒と考えられていました。

世界に知られる電子の街にしてオタク文化のメッカでもある「秋葉原」の名も、この秋葉山…いや、三尺坊へのブーム的な信仰(秋葉信仰)からきているのです。つまり、江戸時代の都市の大敵、火事を恐れた庶民はこぞってこの「火伏の神様」を信仰し、これが一大ブームとなって秋葉山へ続く参道(秋葉街道、秋葉路)が全国にできたのです。秋葉原にはその参道を照らす常夜灯があったということです。なにせ、庶民の家は紙と木を材料にして出来ていましたし、狭い場所に肩を並べて建っていましたから。

三尺坊とは戸隠・教釈院(現・岸本家)に生まれた実在の人物といわれ、光仁天皇の宝亀9(778)年、母が観音を念じて生まれたという神童でした。一説によりますとその観音は飯綱山の三郎天狗の化身であったともいわれます。やがて越後の栃尾で修行し、立派なお坊さまになりましたがある日不動三昧の法を修し、満願の七日目の朝、焼香の火焔の中に鳥の如く両翼が生じ右手に剣、左手に索を持つ相(飯綱権現の姿)を感得し、自らその本尊たらんことを思って思惟すると、煩悩生死の業が滅尽して飛行神通自在となり(つまり天狗になったということです)、一匹の白狐にまたがって遠州秋葉山に止まったといいます。その地がここで、それは平城天皇の大同4(809)年11月16日とも永仁2(1294)年8月中旬ともいわれます。その百数十年後にも尾張の円通寺に現れ修行し、火伏の秘法を感得したといいますから「ご立派」のひとことです。

ここ「秋葉寺」の開基は養老2(718)年、行基菩薩によるとされ、当初は大登山霊雲院と称したそうですが、三尺坊の出現により今の寺名となりました。その後、江戸時代の1700年代には114代中御門天皇、118代後桃園天皇の勅願を受けています。しかし明治の初めには寺の内部抗争が起きたり、住職が病没したりのゴタゴタに乗じて、廃寺を強いられ、三尺坊のご神体は本末関係の本寺にあたる「可睡齋」に移されます。同時に山頂には神道系の火伏の神である火之火具土神を祀る「秋葉神社」が建立されました。

明治13年11月18日、多くの信徒の願いが叶い、再建の許可が下りて現在に至っています。しかし写真をご覧になればおわかりのように、「秋葉神社」や「可睡齋」に比べて大分荒廃しているのが気になります。それもそのはずで、私が訪れたときには堂守さんが一人、しかも本堂に上がり込んで大声を出して、あきらめかけた頃、やっとお見えになりました。で、念願の三尺坊のおふだをいただけたというわけです。

しかし、ここが火防の本霊場と主張する確固たる理由があるのです。それは政府や皇室から下賜された菊の紋章や天子の御衣、大額や建立資金だけではなく、誰にでもわかりやすいこと…じつは秋葉山は戦国時代に武田信玄によって焼かれ、その後明治34年3月、昭和18年3月(近くの「秋葉神社」が山門を残して焼失)、昭和25年3月の3回にわたる山林火災に襲われましたが、その度に難を逃れているのです。

本堂内部。三尺坊大権現は真殿に祀られている。

 

本堂の土間には、さりげなく立派な仏像が…。左は珍しい鉈彫りの三尺坊だ。円空作だろうか…すごくイイ。

江戸時代、多くの庶民がくぐったであろう仁王門。

仁王像の傷みはかなり激しい。
立派な堂宇が立ち並び多くの僧侶が謹行する「可睡齋」、鉄筋造りの社殿や金色に輝く鳥居を誇る「秋葉神社」に参拝した後では、ことさらに心が痛む

人が見あたらず、何度も大声を張り上げて、ようやくゲットした三尺坊のおふだ。寺務所の外からおふだやお守りが見えていたので、忍び込んででも(もちろんお金は置いて)いただいてこようかと思いました。
chap-2の「おふだ」でも紹介しましたが、ウレシイのでここでも…

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