戸隠 火之御子社

所在地 長野県上水内郡戸隠村
祭 神 天鈿女命(あめのうずめのみこと)、高皇産霊命(高皇産霊命=たかむすびのみこと)、栲幡千千姫命(たくはたちちひめのみこと)、天忍穂耳命(あめのあしほみみのみこと)
ご利益 舞楽芸能、開運、火防

戸隠五社の中で唯一、中世から神道を守り抜いてきた神社。宝光社と中社の間に鎮座していますが、ここだけ駐車場がないうえ、鳥居も小さいので車できた観光客には見過ごされてしまいがち。境内には社務所もなく、五社の中では一番地味な存在ですが、前庭も広く、とても和める神域です。

主祭神は天の岩戸の前でストリップ(失礼!お神楽です)を演じたことで名高い天鈿女命。じつは他の祭神の方が系図的には神世七代以前から続き天照大神につながる正統派の天津神々なのですが、やはり人気を優先したのでしょうか。

創建は承徳2(1098)年。1100年代には西行法師がこの地を訪れましたが、土地の子供達との頓知比べに敗れてここから引き返したという伝承があり、境内に何代目かの「西行桜」が残っています。

戸隠には戸隠山伝説(奥社参照)から、基本的に天の岩戸開き神話に係わる神々が祀られていますので、天鈿女命もここに招集されたのでしょうが本来ここの神社の主祭神は、その社名からも「火(日)の御子」…すなわち太陽神・天照大神の御子である天忍穂耳命であったのではないかと思われます。
ちなみにもう一体の祭神、栲幡千千姫命は天忍穂耳命のお妃神。高皇産霊命は栲幡千千姫命の父神にあたります。つまり、天鈿女命のみ系図から外れているのです。

小ぶりな社殿は比較的新しいようです。車道から入ってすぐの場所にありますがとても静寂な場所です。駐車スペースがないため、見過ごされがちです。
話が逸れますが、社殿前を通る県道36号線(信濃信州新線)からは飯綱山の美しい山容を望むことができます。

平安末から鎌倉初期の歌僧、西行法師が善光寺に旅したおり、戸隠にも立ち寄ったという伝承があります。途中、ワラビ採りに夢中になっている子供を見て「わらびにて手な焼きそ」(藁の火で手を火傷するなよ)とからかったところ「ひのきにて頭な焼きそ」(ヒノキの皮で作った菅笠=火の木または火の気で頭を焼くなよ)と言い返されました。感心しながらも火之御子社の前に来て、子供達が桜の木に登るのを見て「猿稚児と見るより早く木に登る」(猿の子供がいると見るや、素速く木に登ってしまったぞ)と再びからかうと「犬のようなる法師きたれば」(猿の大敵である犬みたいに薄汚れた坊主が来たからだよ)と返された。
これを聞いた西行法師は子供達の才覚に驚き、これ以上進むと、どんなに怖ろしい事が起きるかわからない、と恐れをなして引き返したといいます。子供達が登ったという木がこの「西行桜」です。

天の岩戸の前で色っぽく踊る天鈿女命。戸隠には30個所ほどある観光ポイントに、このような彫印のある石柱があり、みやげ店で専用の拓本集印帳も売っています。

しかし、この女神の旦那様ともいわれる猿田彦命は、私が知る限りでは戸隠には祀られていません。
単身で祀奉されて、ちょっとお気の毒です。

こちらの絵馬(部分)は奥社の絵馬堂に奉納されているものです。巫女姿の「天鈿女命」が岩屋の前で踊っています。神話に比べると大分品が良いですね。

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