絵馬-人物・祭り・図柄

ここでは一部を除き、特別に神仏に係わりのない図柄の絵馬をご紹介します。
バラエティーに富んだデザインのものが多く、日本人の習俗習慣、美的センス(善し悪しは別として)や歴史観が伺われます。
眺めているだけで楽しい(私だけかも知れませんが)。
中にはもっと大きく扱いたいものもありますが、データ量の制約もあり、致し方なしです。


京都・八坂神社の祇園祭。
これは妻の京都みやげです。幅が通常の絵馬の倍はあります。つまり、奉納用というより土産用なのでしょう。
ご存知の通り祇園祭とは、もともと御霊(怨霊)を慰めるための神事でした。
極論ですが、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教などの「一神教」は荒涼とした生産性の乏しい土地から生まれました。
ですから民俗を纏めるためには豊かな土地を「征服」する方便としての宗教が必要だったのです。
今でもよく使われる「聖戦」という言葉が、まさにそれを物語っています。
一方、自然に恵まれた日本では、自然にの中に神の存在を認識し感謝する「多神教」の風土が培われました。
ですから私たちにとって最も恐ろしいものは災害・天災であったわけです。
農耕民であった私たちのご先祖は、自然を畏れ敬い、何事も起こらぬよう神を祀り祈ります。

ところが中世になると政争に敗れた貴人や横死した人の霊が悪霊・怨霊と化し、災害をもたらすと考えるようになりました。
その代表が菅原道真であり崇徳上皇です。そこで彼らを神として祀り込め
彼らの怨念を慰めるために御霊会(ごりょうえ)を行ったのです。それが祇園祭の始まりです。

大国魂神社の暗闇祭り。
なんとなくほのぼのしい絵柄の絵馬。夜でもなく、祭りらしい荒々しさもありません。
しかし、最近は業者の作った既製絵馬が多い中ヘタウマではありますがオリジナリティがあります。

立川市・阿豆佐味天神社(猫返し神社)の祭り。
この神社にも菅原道真が祭られていますので、これも御霊会なのでしょうか。近くにこんなお祭りがあるとは絵馬を見るまで知りませんでした。

武蔵野市・杵築大社の絵馬。
JR武蔵境駅の南口にあり、武蔵野吉祥七福神巡りのコースに入っています。徳川家康の外孫、出雲松江藩の初代藩主・松平直政公が創建したということで、社紋には葵の御紋が使われています。出雲との係わりも深いようで大黒さまと恵比寿さまが祀られています。
しかし、この神社で私の一番のお気に入りは「富士塚」。鳥居をくぐって左にあります。

静岡県富士宮市・富士山本宮浅間大社の絵馬。
先ずはめでたい絵柄です。じつは富士山の八合目以上はここの神社の境内となっているのです。私が参拝した時は本殿の改装中で、わずかに上層部が拝めただけでした。坂上田村麿とか徳川家康との係わりもあり、ずいぶんと立派な神社です。

江東区亀戸・亀戸天神社の絵馬。
天神社といえば梅が常識ですが、藤も大変見事です。しかしこの絵馬は紋といい、五角の形といい、梅にも未練を残していますね。手前は太鼓橋、ちゃんと亀戸の名の発祥となった亀さんもおります。

杉並区・井草八幡宮の源頼朝公。私のお気に入り。解説付きでなかなか立派な絵馬です。せっかくですからその解説文をそのまま掲載します。

絵馬「源頼朝公遅の井伝説図」
 その昔、源頼朝公は奥州に向う途次この地に立ち寄られたが、折悪しく旱ばつのため将兵の飲水に困り、雨乞いをするなどして各所を探らせた。自らも弓の本筈(もとはず)で地を掘り、七度にしてようやく水を得たといい伝えられ、今や遅しと待ちあぐねたところから、これを「遅の井」と呼ぷようになった。この井水が善福寺池の源泉と伝えられ、このあたりが遅野井とも言われている所以である。
  源頼朝公と深い縁のある当社はこの地方一帯の総鎮守であり、古地名を冠して遅野井八幡とも称され、宝物殿には遅の井の故事を描いた奉納額「板絵着色遅の井伝説図」が保存されている。
  この絵馬は源頼朝公の遅の井伝説を描いたものである。
  (杉並区は昭和五十七年十月に「板絵着色遅の井伝説図」を最初の区文化財に指定した)

渋谷区・金王(こんのう)八幡宮の金王丸。金王丸は平安末期の勇将で現在の地名の元となった渋谷氏の出です。武士の台頭のきっかけとなった保元、平治の乱に参加し、源義朝に従い、後に頼朝とも深く関わり、意に添わぬまま義経と戦い、捕らえられて立派な最期を遂げたということです。絵は常磐御前を警護する金王丸で手には、現在も当社の宝物である「毒蛇長刀」を持っています。

茨城県岩井市・国王神社の絵馬。
武者姿の将門公の絵馬もあったはずなのですが、あいにく品切れ。残念です。社務所は無人でしたので、裏の民家にお声をかけてなんとかゲットしました。何といっても将門公の本拠地はここですから。スタンプの絵馬でも充分満足いたしました。

静岡県富士宮市・村山浅間神社のぼけ封じ絵馬。
氏子総代の方が社務所の奥から見つけ出してくれたもの。ご利益と絵柄がおもしろい。…というかオンタイムな柄で、当然私にもふさわしい。
で、なぜ老夫婦とカボチャなのかと小学館の『ことわざ大辞典』を調べたところ、「寒の入りに南瓜を食えば中風にかからぬ」とある。これは奈良の諺だそうだが、カボチャにはビタミンが豊富なので理屈に適っている。また「南瓜と坊主はひねねばいかぬ」とあった。意味は「カボチャは熟して実の入ったのがよく、坊主は老成して経験を積んだものがありがたい。ともに老熟したほうが良いという意」とあった。似たものに「拗ねて良いは医者・坊主・南瓜」これは強情で偏屈な態度と「熟す」の意がかけてある。う〜ん深いナ!

横浜市・伊勢山皇大神宮の七五三詣り絵馬。
関東のお伊勢さまといわれるだけのことはあります。横浜全域を見渡せる一等地に鎮座。売店の巫女さん(アルバイト)まで気位が高そうでした。

杉並区・下高井戸八幡社の初宮参り絵馬。
とくにここの神社とは限らぬらしく、区内の他の神社でも見かけた。若いお母さんが何となく色っぽい、と思う私は不純でしょうか。

杉並区・大宮八幡宮の初宮参り。
これは実際に初宮参りのお祓いを受けなければ分けていただけない。従って、境内に奉納されていたものを撮影しました。確か、私の娘もここに初宮参りしたのですが、遠い昔のお話しです。

高尾山薬王院延命地蔵の絵馬。
本堂に向かって右奥、大師堂の隣りに延命地蔵尊の像が鎮座しています。宝珠をあしらった絵柄と変則の八角型がいかにも仏教的です。

豊島区・雑司ヶ谷鬼子母神のざくろ。
ご存知、鬼子母神は子沢山のくせに人の子を捕らえては喰らっていたという女夜叉ですが、仏に諭され人肉の味がするという柘榴で我慢するようになりましたとさ…という話ですが、この話はまともには信じられません。
柘榴は果皮の中に多くの実(種子)をつけるから子沢山につながる、という説明も不十分です。
では何かといいますと、柘榴は子宮そのものなのです。鬼子母神は子宮ごと子どもを喰らっていたと考えるべきでしょう。ウワッと、すごい話に展開してしまいましたが、砂糖をまぶして訳の分からなくなった話の元の味は案外苦いものです。

中野区・新井薬師の眼病平癒祈念絵馬。
お薬師さまといえばだいたい眼病平癒です。この手描きの絵馬は古風を残しており、すばらしいデザインです。まるで、つげ義春の作品に出てきそう。

杉並区・久我山稲荷神社の厄除け絵馬。
シンプルですが「厄」の字を逆さにして厄除けをあらわすとは、なかなかシャレていますね。これも言霊(ことだま)効果の一例ですね。

長野県・戸隠中社の獅子頭。
勉強不足で戸隠中社と獅子頭の関係はよくわかりません。わかり次第ご報告いたします(汗)。
新宿区・皆中稲荷神社の当たり絵馬。
この可愛らしい絵馬は、宝くじを買った人に人気だそうですが、恋愛成就にもご利益がありそうですね。

新宿区・皆中稲荷神社の鉄砲組百人隊。
まるでデューク東郷(ゴルゴ13)みたいな鉄砲隊員の絵馬は2500円と、ちょっとお高め。
どのような職業の方が奉納するのでしょう。まさか殺し屋ではないでしょうが、暴力団組員とか、テロリストとか、ギャンブラーとか…
ちょっと怖い。

相模・日向(ひなた)薬師絵馬。
ここに描かれている十二単の女性は平安期の相模守・大江公資(きみすけ)の妻であった相模さん。眼病を患って薬師堂に籠もり祈願をした時に歌ったもので「さして来し日向の山を頼む身は 目も明らかに見えざらめやは」と願いを込めている。よほど重症だったのだろうか。
余談だが、崇徳院の怨霊に仕えた天狗も同じ相模という名だ。

津久井郡相模湖町・石老山(せきろうさん)・顕鏡寺の宝珠絵馬。
蓮座に乗り、炎に囲まれた三つの宝珠が美しい。すぐれたデザインだと思う。石老山の中腹にあるこの寺は若い住職夫婦が守っていた。高野山真言宗の寺だが、さらに登ると飯綱大権現の祠があり、嬉しい限りだ。
千代田区平河町の平河天満宮の梅絵馬。
鉛筆の下書きの跡がくっきりと残る超ヘタウマの梅。しかも文字はゴム印。 誰が描いたのでしょうか。まさか宮司の小学生の孫に描かせたのではないでしょうね。でもどんなに立派なものでも、お祓いもしていないような(一部の神社ですが)既製品絵馬に比べれば、心が入っているだけでも何倍もありがたい。
目黒不動尊の本堂に向かって右横に愛染(あいぜん)明王の石像があります。そこにお供えする絵馬ですが、この仏様は縁結びや良縁成就にご利益がありますから、ハートをモチーフにしたデザインになっています。ハートの中に書かれた梵字は「ウン(ウーン)」です。
雨の日、目黒大鳥神社に参拝したのですが、すでに社務所が閉まっており、仕方なく他人さまの絵馬を撮影させていただきました。大鳥神社は鷲(おおとり)神社と根元的に同じで11月の酉の日に熊手を頒布することで有名。いわゆる酉の市です。絵馬にも熊手が描かれていますが、右下はヤツガシラでしょうか。
静岡県袋井・可睡斎の火祭りをイメージした絵柄でしょうか。左上の烏天狗は三尺坊大権現と思われますが、ずいぶん野生じみた顔をしています。この神様は天狗ですから「火防」にご利益がありますが、なんだか見方によっては天狗が江戸の大火を煽り、火消しが懸命に消火しているみたいな雰囲気が…。

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