『TAKAO(京王電鉄広報部発行の情報誌)』掲載小論集
第二話「ふしぎな神さま天狗さま」


('07年6月発行「夏号」) 

高尾山には天狗さまの祠もあります。健脚を祈って大きな一本
歯の鉄下駄などが奉納されています。

 高尾山のアイドルといえば何といっても天狗さまでしょう。高尾山の天狗は大戦前後まで度々いたずらをしたり、不心得者に罰をくだしたりしていたということです。

 昔は薬王院の南にあたる甑谷(こしきだに)で天狗倒し…深夜に大木が倒れる音がするが翌朝そこに行っても何事もないという…の恐ろしい音を何人ものお坊様が聞いたり、「天狗なんかいるものか」などと言う不信心者に天狗礫(つぶて)…大風とともに大量の石やヤニの礫が降ってくる…を浴びせたりしていたそうです。
反面、親孝行の母親のために温泉を出したという話も残っています。

 天狗は河童や鬼などと共に民話や妖怪映画に必ず登場する闇の人気キャラですが、じつは天狗は他の妖怪達が及びもしない決定的なステータスを持っているのです。

 もともとの天狗は人知の及ばない自然現象だったり猛禽類(トビやノスリ)だったり、特に仏教(天台系密教)の布教を邪魔したり、お坊様の修行を妨害したり、争乱や災害を好み、時としては自らそれを引き起こす妖怪でした。
  ところが平安時代末期には、権力争いに敗れたまま亡くなった皇族や高僧の無念が「怨霊」と化し、その怨霊が天狗になり始めたのです。ですから天狗は大変高貴な血筋を引いているわけです。
 しかしその分、反体制的で喧噪を好み、旋風を巻き上げ、火事を起こすといわれていました。ただ、知識も持ち合わせていますから人に何かを教えることが非常に好きで、剣術や呪術を教えたり、おせっかいにも人をさらっては遠く離れた都や異界を見せたりしています。しかしその場合はちょっとヌケたところのある少年が多かったようです。

 一般的に天狗は深山に棲んでいる魔物と思われていましたので、同じく深山で厳しい修行を積み、超能力を身につけた修験者のイメージが重なって山伏の恰好をしています。修験者自らが天狗を名乗った場合もあったでしょう。
  このことから天狗は次第に山の守り神、さらにはお寺や神社の守護神とされるようになりました。ですから高尾山などの修験の山、山岳信仰のある山には必ず天狗さまが祀られています。
 私たちのご先祖は災害や病気などをもたらす神様をお祀りして、逆にその禍から守ってもらうという考え方を持っていましたから、江戸時代に天狗は火事を防ぐ神様として大ブレイクします(やはり天狗を祀っている秋葉信仰や愛宕信仰も同じです)。
 しかし、アイドルとして子供達からも人気を得るようになったのはつい最近のことで「鞍馬天狗」の登場からです。

高尾山の天狗は人気に押されて鼻高天狗になってしまいまし
たが、本来はカラス天狗だったのです。

 昔は嘴のあるカラス天狗(小天狗)が正統派でしたが、今は鼻高天狗(大天狗)のほうが人気があるようです。ただ、どちらが大きいとか、術が優れているとかは一概にはいえません。
  なぜなら同じ山の同じ名の天狗が人気獲得のためにカラス天狗から鼻高天狗へと姿を変えている例も多いからです。
 じつは高尾山の天狗も、もともとはカラス天狗の姿(飯縄大権現)でした。しかし商店街で登用されているキャラクターも茶店で売っているお面も、ほとんどが鼻高天狗です。

 今の高尾山の天狗さまはイタズラをしないといわれていますが、お山のマナーを守らない人には、昔のままに厳しくあって欲しいですね。

 …次回は高尾山の七福神についてお話しいたします。

*天狗についての記載は中学生からの質問(高尾山の天狗について)に答えるの方もご覧ください。

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